胃腸炎後の乳糖不耐症のお話
- 2025年5月30日
- 小児科
最近、胃腸炎が流行しているようです。保育園など集団生活をしているとどうしても感染してしまうことがありますよね。
多くのお子さんでは、1週間程度で下痢も治まり、元気に登園できるようになります。だた特に、1歳前後のお子さんでは、ときに下痢が長く続くことがあり、ご家族が「乳糖不耐症なのでは?」と心配して受診されることあります。
乳糖ってどんなもの?
乳糖はグルコース(ブドウ糖)とガラクトースからなる「二糖類」です。赤ちゃんの脳の発達や腸内環境を整えるのにとても大切な栄養素です。
ふだんは、小腸にある「ラクターゼ」という酵素が乳糖を分解して、体に吸収できる形にしてくれます。ところが、胃腸炎などで、腸の表面が傷つくと、ラクターゼの働きが一時的に低下し、乳糖を十分に分解できず、下痢やお腹の張り、腹痛を引き起こすことがあります。これを「二次性乳糖不耐症」とよびます。
ミルクを変えた方がいいの?
下痢が2週間以上続くときには、医療機関で「乳糖除去ミルクに変えてみましょう」と提案されることもあります。ただし、すべてのお子さんに必要というわけではありません。
最近の指針1((2024年に再確認された米国小児科学会の報告)によると、脱水や栄養不良のないお子さんであれば、通常のミルクを続けても下痢の回復には差がないとされています。
当院の考え方
当院では、1歳前後のお子さんで、活気と食欲があり水分も取れているような場合には、ふつうのミルクを継続することをおすすめしています。なぜなら:
そのため、特別な対応をしなくても、時間とともに症状がよくなるケースがほとんどです。
さいごに
乳製品を食べて一時的に症状が出ることがあっても、消化管に害を及ぼすわけではありません。そのため、ご家族には「慌てなくても大丈夫」とお伝えしています。
もちろん、元気がない、水分が取れない、体重が減ってきたなど心配なサインがある場合には、早めの受診をおすすめします。