たかが保湿剤、されど保湿剤:ヒルドイドの適正使用|なかむらこどもクリニック|登戸駅徒歩1分|川崎市多摩区の小児科・アレルギー科

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たかが保湿剤、されど保湿剤:ヒルドイドの適正使用|なかむらこどもクリニック|登戸駅徒歩1分|川崎市多摩区の小児科・アレルギー科

たかが保湿剤、されど保湿剤:ヒルドイドの適正使用

ヒルドイドなどのいわゆる保湿外用薬は、皮膚の角質の水分量を増やす効果があり、皮脂欠乏症(つまり乾燥肌のこと)の治療に用いるお薬です。
 
当院では沢山のアトピー性皮膚炎の患者さんを診療しておりますが、この疾患に困っているお子さんの皮膚はバリア機能と呼ばれる「角質内に水分保持する力」が弱く、それをおぎなう目的で保湿剤が多量に処方される事があります。
 
アトピー性皮膚炎の方にとって、大切なお薬なのですが、数年前から不適切な処方が増加しており、今後、保険適応がなくなるかもしれないという由々しき事態が起こっています。
 
問題はSNSなどで、保湿剤の美容面での有効性が紹介され、保険診療を利用して、安価に同剤を希望されることを増えていているためです。数年前から新聞などで報じられていますが、とても困った問題で、残念な事に「たかが保湿剤」との思いもあり、利用者の罪悪感は薄かったとの報道もありました。(処方する医師もどうかと思いますが、、、)
 
健康保険を管理してる健康保険組合連合会(健保連)はこの問題を非常に深刻に捉えており、外来では他の湿疹治療薬などと同時に処方されていない場合には保険適応から除外すること、また、今後保険適応外とすることを提言するに至りました。
 
これに対し、日本皮膚科学会や製造元企業は適正使用するように注意喚起を行い、中央社会保険医療協議会(厚生労働大臣の保険診療に関する諮問機関)でも、アトピー性皮膚炎などの疾患で多量の保湿を要する患者さんもいるということが指摘され、現在まで保険診療での処方ができる状態が続いています。
 
2018年度の診療報酬改訂では、「疾病の治療であることが明らかであり、かつ医師が当該保湿剤の使用が有効であると判断した場合を除き、これを算定しない」との記載に留まっていますが、今後も検討されるとの記載もあり、予断を許さない状況です。
 
私達の医院では、沢山のアトピー性皮膚炎患者さんに来院頂いております。その方たちが今後も必要な量の保湿外用薬を保険適用で使え続けるためにも、適正使用を守る責任があると考えています。
 
このため、医師が診療の際に皮膚乾燥などの「明らかな所見がない場合」には、適正使用から逸脱する可能性があるため、同日の処方をお断りし、所見がある時に来院頂くことがあります。
また、処方をした際には効果の評価が必要となるために再診をお願いいたします。
 
「たかが保湿剤、されど保湿剤」上記のような背景をご勘案の上、適正使用へのご理解・ご協力をお願い致します。